5月1日(水) 雨→曇

 今日はアムステルダムを離れて,ブルージュに向かう日だ。途中アントワープで列車を乗り換えることもあり、念願のルーベンスの絵を見に行く。アントワープの駅を出ると外は雨だった。しかも観光案内所がない? 売店の人に訪ねるとノートルダム寺院の前にしかないとのこと。まあ目的地もそこだからいいんだけど(^^) 
ノートルダム寺院の前までくるとちょうどメーデーの行進とぶつかった。日本のそれとは異なり、かなり陽気なもの。これも国民性の違いなのだろうか?

 ようやく見つけた観光案内所に入りパンフレットをもらおうと英語で話しかけると「日本人のかたですね」と日本語で返事が返ってきた。ちょっと吃驚。ヤンさんというかたで、フランダースの犬が縁で日本語を覚えたとのこと。今年の9月には5週間の休暇をとって彦根,大津近辺をまわるといったことを話された。

 残念なことに当日はメーデーであったため、主立った観光名所はすべて休業だった。ただ幸いにもノートルダム寺院はメーデーとは関係なく拝観することができた。

 入場料を払い、荘厳な雰囲気の大聖堂の中へと入るとステンドグラスが私を圧倒する。少し重たくなった足を引きずってルーベンスの絵の前にたどり着く。心の奥底にフランダースの犬のラストシーンがあったことは否めないが、そのことを除外してもすばらしい絵である。キリスト教徒でもない私がいうのも変な話だが、その荘厳な雰囲気には見るものを黙らせる迫力が宿っている。じっと絵を眺めていると思わず涙がこぼれてきた。絵全体からキリスト様の苦しみ、慈愛といった種々の感情が吹きこぼれてくる。その圧倒的とも言える「無言の言葉」に身体に震えが走った。なぜネロ少年があれほどまで、この絵を見たがったのか? その一部が理解できたような気もする。私は旅先では写真を撮りまくるほうなのだがなぜかここでは写真を撮る気になれなかった。写真ごときにこの風景が写しとれるものか!

 後ろ髪を引かれる思いで外に出ると広場でアメリカ人大道芸人がショーを始めるところだった。ショーは関西芸人にも通じるところのある「しゃべくり」を中心に進む。途中かなりやばいネタもあったが(^^; 日本人の団体もいたのだが、英語が分からないのかまったく無反応。笑い転げる我々に芸人は私たちのほうを注目していたようだ。途中からは日本に関係するジョークが増えてきた(いわゆる政治ネタが多いのだが)

 約20分のショーを見終えて,一路駅へと向かう。まだ雨はやまない。5時過ぎの列車に乗り込みブルージュへと向かう。ついたのは6時頃。日本ならそろそろ暗くなってくるころだ。ちょうど駅で日本人の親娘と出会った。二人で自由旅行をされているとのことでこれからアントワープへ向かうということだった。その親子の薦めに従い駅前からバスに乗り込みマルクト広場へ。今夜の宿は広場からほど近い魚市場の裏にある。

 当然ながらツインの部屋を予約していたのだが、手違いでダブルの部屋が予約されていた。さすがに男二人でダブルベッドに寝るのはいやなので、交渉した結果、当初の値段でもう一部屋借りられることになった。結果的にはシングル2室ということになり、逆に得した気分。

 チェックインをすませたあと、再度マルクト広場へと舞い戻った。カリヨンの美しい音色をBGMにして周囲を散策。運河のたたずまいなどを満喫する。8時頃にマルクト広場に数多く並んでいるビストロの一軒に入る(そこを選んだ理由は特にない)。私は貝類が苦手なため,ステーキにしたが、友人は「バケツ1杯のムール貝」をオーダーした。

「ビールを」と注文すると種類をきかれる。
「なにがいい?」って聞くと「好みを言ってくれ」ときりかえされた。そこで軽めのやつと注文をすると1種類選んで持ってきてくれた。どちらかというとアメリカタイプ(バドワイザーのようなやつ)だったけど結構おいしかった。なんでもないビストロでもビールの種類を聞かれるなんてやっぱりベルギーなんだと痛感した。
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